2.水上に住む人々と共に
水上村の状況
カンボジアのほぼ中央に、東南アジア最大の湖トンレサップ湖があります。水上村コンポンルアンは、このトンレサップ湖の上にあります。この村では1,600世帯以上の人々が船の上で生活しています。暮らしている民族は、約1,000世帯がベトナム人で、その他はクメール人とチャム族の人々です。
人口はコンポンルアン全体で6,000人を超えるといわれています。住民は主に漁業で生計を立てていますが、貧困世帯が多く生活全般に様々な問題を抱えています。水上村には電気、ガス、水道はもちろんなく、人々は生活用水として湖の水をそのまま利用していますが、生活廃水や家畜の排泄物、ゴミなども全て湖に廃棄しています。よって周辺の水質汚染は著しく、健康にも悪い影響を及ぼしています。
ここに住む多くのベトナム人の日常会話はベトナム語です。ですから、ベトナム人の多くはクメール(カンボジア)語を話す必要ガなく、また話すこともできません。そのため役所や病院、学校など公共機関へ行っても、確実に意志を伝えることができず、カンボジア社会から孤立した状態になってしまっています。病院にかかることができず、病気を悪化させそのまま死に至るケースも少なくありません。子どもは、言葉の問題から公立の学校へいっても授業についていくことが出来ません。
JLMMでは、2001年からこうした問題に対処するため、バッタンバン教区と住民の協力の下、水上教室を設置し、子ども達への識字教育、住民によって組織された基本的な保健サービスの運営補助などを行ってきました。
水上村での活動
保健衛生プログラムなどを実施しています。
水浴びプログラム
水上村での活動は、ベトナム人が多く住む地域の中にあるカトリック教会を中心に行っています。その教会に識字教室も隣接しています。この教会や識字教室を利用して、週1回、子ども達を対象にした水浴びプログラムを行っています。水浴びと一緒に衛生指導や栄養指導も合わせて行っています。子ども達の水浴びを手伝っていると、子ども達の健康状態が分ります。爪切り、耳掃除などや、皮膚病を持っている子どもには薬を塗ったりもしています。最近では、水浴びプログラムに通う子どもたちの、湿疹や虱はほとんど見られなくなりました。
また、JLMMカンボジアでは、ステンミエンチャイでも配布できるように湿疹用石鹸、虱用石鹸を準備しています。この石鹸を住民にも安価で販売していて、住民も自ら買い求め日常的に使用するようになってきています。水浴びプログラムには、住民や母親の参加や協力もあり、一体となって和気藹々と行っています。
病人支援プログラム
水上村で暮らす人々には、漁の時期を除いて現金収入はほとんどありません。病院へ通うのに必要なお金もないことがあることから、重症の場合に限り、病院受診のための交通費を支援したり、一緒に病院まで付き添ったりしています。軽症の場合は、栄養や処置の方法を伝えています。
病院に行く病人は、腸チフス、HIV/AIDS、肝硬変、癌、結核など様々です。
ホームケアプログラム
病人の家庭を訪問しています。舟の上でもできる簡単なケアや処置を行ったり、本人や家族に健康指導や栄養指導、相談活動なども行っています。
母子保健に関する活動
水上村では、粉ミルクがとても人気があります。子どもには粉ミルクが一番よいと思われています。しかし、粉ミルクはとても高価な上、哺乳瓶を消毒することを知らない母親も多く、とても危険です。高い粉ミルクではなく、本当は母乳で育てるのが一番です。そこで、産後の母親と乳児を訪問して、母親への栄養指導をするほか、母親が病気の場合などに限り、粉ミルクを支援しています。
また、月に一回産婦人科医師による母子健康チェックも行っています。